ヒト都合の使い分け&参考図書
歴史は未だはっきりと判っていないようですが、5~6百年前に日本で根付き、受け継がれたアジア綿を「和綿(又は日本綿)」、それ以外を広く「洋綿」と区別された記述を多く見かけます。
ひとことで言えば、「和綿」と「洋綿」という言葉は、「日本人」と「外国人」という言葉と似ているかと。あるいは、「和書」と「洋書」とか。
「外国人」という言葉が日本人以外の多様な人種を指すように、「洋綿」という言葉も、和綿以外の様々な特徴のある多様な綿全般をさして使われているようです。
便宜上、私もこの意味でこの用語を使っています。
綿の歴史についての参考文献はこちらをどうぞ。今回の記事も、一部、参考文献の書物を参考に書いています。
『ワタの絵本 (そだててあそぼう) [ 日比暉 ]』はけっこう読みやすくて詳しいのでおススメです。
植物学上の違い
和綿洋綿、どちらもアオイ科ワタ属。衣類に利用されているのは4種。
- 旧大陸起源で二倍体のヘルバケウムとアルボレウム
- 新大陸起源で四倍体のヒルスツムとバルバデンセ
ヘルバケウムは現在ほとんど栽培されていないとのこと。和綿はアルボレウム。出回っているいわゆる洋綿はほぼ四倍体と思われ、アップランド(陸地棉)やシーアイランド(海島綿)などがあります。
和綿と洋綿の間では交雑は起きないと言われているのは、この染色体数の違いのためです。
わかりやすい見た目の特徴
わたしの栽培している綿のそれぞれのカテゴリーを見ていただくと、たくさん画像がありますので、そちらでも確認してみてくださいね。
実の付き方・形状
よくいわれているのは、和綿は下向き加減、洋綿は上向き加減。でも実際はかならずしも全部がそういうわけでもなくて、いろいろ。個体差があります。傾向としては…という感じ。
ただ、和綿のほうが、全体的に幹や枝、実の付け根の枝がしなやかで、実が重くなるにつれて下に垂れやすい傾向はあるようです。でも洋綿も、実が重ければ下向きになりますし、和綿でも上向きに開いている実もありました。
実の形状は、和綿はゆるい三角錐又は四角錐で、皮は少しザラザラぶつぶつと小さな穴があるような見た目。洋綿は、もう少し丸みがあってどちらかというと球状。皮はツルツル。ツヤ有とツヤ無みたいな違い。
花
和綿の花はクリーム色で、中央がえんじです。一部違うモノもあるようですが、滅多に見かけません。洋綿の花は白一色だったり、緑綿はピンクのような赤紫だったり。
最近、和綿は下向きに花が咲くと話されている場面も見聞きします。実の向きと勘違いしているのか、もしくは、吹いた棉を「綿花」という花としてお話されているのかもしれません。
実際は、花の向きはあちこちいろいろです。栽培されている方は、ぜひよく観察してみてください。
葉・草姿・草勢など
綿の葉は紅葉葉といって、モミジの形ですが、和綿の葉と洋綿の葉では、和綿の方が切れ込みが深いです。
(葉の形についての考察記事も、よろしければどうぞ)。
枝振りなどは洋綿の方がガッシリ強い印象ですが、これも全部が全部というわけではなくて、和綿でもしっかりしてみえるものもあるし、もちろん栄養状態などにもよるし、個体差があります。
見慣れた人にはすぐに判る程度の違いですが、画像だけだと難しい場合もありますね。
タネの大きさ・形
これも個体差があるとはいえ、慣れた人が見ればわかるくらいには違います。洋綿の方が大きめ。形も少し長細い。和綿はこぶりで丸みがあります。
繊維の長さ・太さ・強さなど他
洋綿は品種によってさまざまです。和綿は、基本的に太めで、コシの強い繊維と言われています。触ってみると、しっかり弾力があることが判ると思います。
残念ながら、顕微鏡での拡大画像などはありませんが、繊維の画像は各品種のカテゴリーをご覧ください。この記事下にもリンクがあります。
成長速度なども違いがあると感じていますが、目に見える特徴としては以上です。
和綿の種類
和綿のなかでも、栽培地の名前をとって、会津・三河・河内・大島など、たくさんの種類があるといわれています。でも基本的に栽培地ごとに名前をつけているだけのようです。
各地の和綿で、大きな特徴の差はありませんが、東北地方では河内綿より会津綿の方が育ちやすいといった程度の差はありそうです(生育サイクルが短いなど・未確認)。繊維の長さ・太さや弾力はわかりません。
ただし、和綿のなかで、おおまかに2種類、葉の色・茎の色などに違いの見られるものはありました。詳細は和綿のカテゴリーをご覧ください。
和綿の種類については、参考文献にもある『わたわたコットン 鴨川和綿農園』がとっても詳しかったです。でも絶版みたいで、ヒジョーに残念。
ちなみにその地方で栽培を続けた「在来種」とか、「古くから日本で…」などと言われますが、たかだか5~600年の歴史かと。栽培が全国に広がったのも江戸時代の少し前くらいのようですから、「和綿」は、数百年前に日本に持ち込まれ、有用だったが為に栽培されてきた「外来種」ともいえますね。
本当にいわゆる「伝統」を重視する方には、和綿よりも麻や木の皮などの植物繊維から糸をとることをおススメします^^
また、和綿の生育サイクルは日本の環境に合っていると言われていますが、現代の日本では洋綿も品種や栽培方法によっては、それなりに収穫できているのではないでしょうか。少なくとも私の畑では、洋綿と和綿で目立った収穫量の差は無いようにみえます(品種ごとの差の方がまだわかりやすいような)。
洋綿の種類
洋綿の種類については、前述の学術上分類もあるし、色の違いもあるし、世界各地に、それこそ伝統的な品種がどれだけあるのか全くわかりません。
日本だけでもそれぞれの栽培地で名前をつけていることでわかるように、世界各地で、その土地でいろいろ受け継がれてきたタネがあるのだと思います。
商業的理由で選ばれた綿は登録品種として、どこかに記録があるかもしれません。ただ、そういうものは遺伝子組換え処理をされて栽培されているものが多いようです。
洋綿の白、特にアップランド系の白綿はその可能性が高く、皆さんの栽培されている綿にも混入しているようなので、検査をお勧めしています。
日本では遺伝子組換え綿の栽培は法律違反になりますが、メルカリやCreemaなどでも非遺伝子組換えであるという保証表示もないまま販売されてしまっています。。
出所不明の和綿以外の白綿、いわゆる洋綿の白を栽培している方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
洋綿の白以外、色綿の茶綿や緑綿の色は、品種によっても個体によっても、色合いの異なる実が生ることがあります。
そうした不安定な面からも、商業的に遺伝子組換処理をされるほどの価値があると思われず、処理された綿が出回っているとは考えにくいです(あくまで推測ですが、前述の記事の検査機関のデータを見ていただければ、「洋綿の白」が一番アヤシイと判断できると思います)。
私が栽培している綿
私が育てている綿については下記ページをどうぞ。葉や花の違い、繊維の違いなど、詳細はそれぞれのカテゴリの記事をご覧ください。