製作記録一覧

地機布14でズボン&手紡ぎ手織り手縫いズボンの比較

地機布14で作ったズボン、今年の冬の部屋着として大変重宝しています。暖かい布を目指して紡いで織っただけある。

朝、穿く時も、ジーパンなどでよくあるヒヤッと感は全くありません。

でも予想通り、毛羽立ちはしています。

股下部に、というより、全体的になので、やはり撚り弱めふんわり紡いだ糸の特性なのかなと思います。

以前、全体が毛羽立ちだらけのショールを優雅に纏っている女性に話を聞いたことがあります。できた毛羽が模様のようで面白かったから、自分でも付け加えたと言っていて、ステキだなと思いました。

ただ、乾燥して敏感になっている肌があると、毛羽立ちはやっぱり痒い(汗)。天然素材でもなんでも、敏感肌な部分は、物理的に何かしら接触があれば刺激を感じる。

毛羽立ちの多い手紡ぎ糸の布より、つるつるした絹やレーヨンの布の方が、敏感になっている肌には刺激は少なくて済む…多少マシ??かなとも思います。

今年の冬はこのズボンと地機布5のズボンを部屋着として、1週間交代で着用・洗濯。

左)地機布5  右)地機布14

地機布5の時の糸は、太め細め混合で、撚りは普通~強め。作った頃の画像はこちら

現在生地は全体的にクタっとしています。膝も出るが、洗濯すると目立たなくなる。

このクタっと感は、洗濯・着用を繰り返すなかで、繊維が少しずつ減っているのだと思います。既製のタオルやシャツと一緒。

毛玉や毛羽立ちはほぼ無し。擦れる内股部分も。紡いだ糸が少し撚り強めの糸だったためと思います。

経糸は細い糸太い糸混ぜこぜですが、緯糸はほぼ一定で少し細め。

手縫い部分のほつれ補修は何度もしていますが、生地自体の破損はありません。

同じ手紡ぎ糸を使って手で縫ったので、力がかかった時に縫い糸が切れることで布への負担が減らせているのかも。

地機布5は特にまだまだいろいろ未熟な感じだけど、作ってから8年、イベント出店や畑、部屋着としても充分着られた。

更に2年くらい、10年ももてば大満足。

これから作るものは、予想寿命の頃までウン十年もつ程度の丈夫さで、かつ柔らかで着心地のいいものを目指そうかな。


綿の手紡ぎ糸の撚り止め方法とその仕組み~最小限の手間で効果を上げる方法を考える

以前投稿した『錘で撚り止め動画』を観て、勘違いされた方がいたら申し訳ない。

綿の繊維は温度で形状を変えない(焦げない限り?)ので、「お湯で煮る→撚りが止まる」わけではありません。

むしろ重要なのは以前の動画にない、干す時、水分が抜ける間の形状。

綿の手紡ぎ糸の撚り止め。綿を紡ぎ、綛上げ後の作業。仕組みを知って、余計な手間や燃費をかけない工夫をしたくて実験してみた

つまり「干すまでが撚り止め」というのが今回の動画です。

でもまあ実際お湯で煮たら干すのが普通なので、「煮て撚り止め」で通じるのですが…。

追記 2022/2/11 ついでに同時にやってしまう人はいるけど…厳密にいうと「精練」は綿の油落とし(綿の場合)。「撚り止め」とは目的が違います。混同されているのをよく見かけますので、念の為。私は手紡ぎ綿の精練は不要と考えています。

緯糸はチャルカで紡ぎ、刀杼に収まるように錘をつくり、撚止めして脱水、そのまま織っている。いつも通り未精練。 先週参加したタリフさんの...

撚り止めの温度・時間

「沸騰まで」「沸騰して何分」といろいろ言われたり書かれたりしていますが、その根拠について述べられていることは少ないです。

私の考えでは、水分が綿の繊維の油分を通過して、全体にしみ込むまでの温度・時間は最低限必要。

ペットボトルは手軽だけど中央の凹みが厄介

それはつまり綿の繊維の質や、糸の太さ・量によって異なるわけです。

長時間やっても特に問題はないかもしれませんが、私はあまり綿の天然の油を落としたくないので、繊維に浸水したのに気づいたら、すぐ火は止めてしまいます。ガス代節約。

(もしかしたら低温の水でも、アルカリ度が高いと油を通過(?)してすぐに水分を吸うかも??)

それと綛をねじってツイストドーナツ状にしたまま撚り止めしている方もいらっしゃいますが、繊維に水分がしみこむ時間が余計にかかります。できれば綛は輪の状態で撚り止めがベストかと。乱れるのが心配なら、きつくせず、軽く綛ごと撚るなどしておくとよいかと思います。

錘のまま撚り止めすることもありますが、あれはそれなりにメリットがあります。綛あげや糸繰はかなりの手間で、それら省略できるため。

少しガス代はかかるし錘の内と外で繊維の状態に差はできるかもしれないけど、それらを天秤にかけて、錘のままの撚り止めを選ぶこともあります。

綿の手紡ぎ糸の撚り止め(よりどめ) 錘(つむ)に紡いだ糸から綛(かせ)にする前に撚り止めする方法。この後、干すまでが撚り止め作業(→より詳細な別動画あり)

乾燥する時の重し

重しをして干せばある程度撚り縮みは伸びるけど、あんまり重すぎると糸のふんわり感が損なわれるかも?

撚りが甘くてあまり捩れないなら重し自体いらないかも。

私は以前は、干す前にグッと引き伸ばしてから、綛の輪を開いて干していました(画像参照)

左)強撚 右)撚り甘め
 

重石は撚りの強さによって変える。どんな糸が欲しいのかによっても。でも基本的には捩れない程度の適度な重さでよいのではないかと思います。

先人の言われたやり方をそのまま踏襲するだけではなく、自分でもなぜそうするのか、なぜそうなるのか考える。一つの方法に固執せず、ケースバイケースで応用するには、その作業の意味を知ることが大事です。

スネイル問題

撚り止めとは関係ないのですが(重しのせいでもない)。

チャルカではまずできないけど、足踏み紡ぎ車だと時々この捩れが残ってしまいます。これができてしまう原因については長くなるので、またそのうち(細めの糸の時だけ。私だけかもしれないし、綿つむぎだけかもしれない…)。

今回のは綛上げ時のたるみが原因ぽい

チャルカでもスピンドルでも撚り加減のバラつきはできるけど、それらに比べて足踏み式の紡ぎ車はどうしても撚り加減にばらつきが出やすいと思います。

まあそれも手紡ぎ故だし、綿だけなのか私だけなのか判りませんが、以前より随分減ったので、あまり気にしてません。

ただ、綛上げの時に伸ばすようにしてても、細い糸だと見逃してしまうことも。

スネイル自体はそこだけ濡らして伸ばしておけば解消できるけど、その結果、綛から飛び出したり弛んだりして扱いやすい綛とは言えません。

糊付けの時も気をつけないと。後々の作業にどんどん影響してしまうので、できるだけ響かないようにしておきたいんですけどねー。

ひびろ糸

手紡ぎ糸の糊付け風景を動画にしました。 使ったのは地機布15の試織用である、少量の細めの糸。 数年前に生葉で染めた...

今回のひびろ糸は地機布13の経糸で、結び方も変えてみました。

今までは単なる綾にしていた中央の部分、ほぼズレませんでした。

手紡ぎの糸だから摩擦のせいかもしれないけど、いつも手紡ぎの糸だし…しばらくこの結び方で様子見。


綛上げ器にカウンターを後付け

私の綛上げ器、カウンターがないので、綛に巻いた後、地道に数えていました。

どこまで数えたか判らなくなるし、眠くなるし…でいつかカウンター付にしたいなぁと思っていたのです。

特にいま紡いでいる細い糸はホント―に大変だし、一本一本数えることで綛が乱れる。

先日の糊付け動画でも綛上げの大事さを再認識したので、やっとカウンターを追加しました。

磁石が一定距離以上接近するとカウント。

ボタン電池風な大きさの磁石を両面テープで固定、検知側も適当な位置にワイヤーなどで固定しました。

そんなこんなで、無事一周ごとに数えてくれるようになりました。

実際の綛上げしている動画をそのうちYouTubeへ投稿予定です。

YouTubeといえば、ブログや動画の情報についてのお話もしています。

ブログの情報だけご覧いただいている方も、通信環境が許すようでしたら、動画の画質を落として、耳だけ傾けていただけるとウレシイです!

【紡ぎ語り】動画やブログの情報について~綿紡ぎ動画にのせて

綿の手紡ぎ糸の糊(のり)付け・ほぐしやすい綛上げ(追記あり)

手紡ぎ糸の糊付け風景を動画にしました。

使ったのは地機布15の試織用である、少量の細めの糸。

数年前に生葉で染めた綿を、紡ぎ車で紡いだ糸です。

綿の手紡ぎ糸を経糸に使用する際の糊付け方法と、糊付け糸をほぐしやすい綛上げの仕方(糸は少量・糊は片栗粉を使用) 誤)脱水層→正)脱水槽

糊付けの糊

現在、糊付けに使われているのは以下のようなものが多いようです。

  • 布海苔(ふのり)
  • 洗濯糊
  • 片栗粉・小麦粉など

人伝てですが、布海苔は糊落ちがよいと聞いたことがあります。でも、織物教室で2回ほど 布海苔を使用しましたが、私にはよくわかりませんでした。

継続して入手しやすいものを選ばれるとよいと思います。たぶん昔の人も、その地で手に入りやすい何かしらのデンプン糊を使っていたのでしょうし。

私は始めた頃は、洗濯糊を買ってきて使ったこともありましたが、数年前から、常に家にある片栗粉で統一して継続することにしました。

記録をとる

繰り返し同じ糊で糊付けするうちに、ベスト・ベターな分量が判ってくる。その為に必ず記録を残して比較・検討することが必要、と考えたわけです。

記録していなかった初期は、とりあえず濃い目にしがちで、綛上げもちゃんとできてなかったから、ほぐす作業がとても大変でした。

今回の糊付けの分量は…

  • 綿の手紡ぎ糸(細め・約40番手) 15g
  • 片栗粉 糸の15%で約2.5g
  • 溶く水 糸の倍ccにしたかったけど、諸々の事情で140cc
  • 足し水 糸の倍ccにしてるけど、今回は無し

これまで教えてもらった糊の量は、それぞれの人や扱う糸によってかなり幅がありました。

それらと、これまでの私の記録・検討の結果、現在、片栗粉の分量は、基本的に糸の10~15%の間。糸の細さなどの状態によって変えています。

といっても、私もまだ5~6件しか記録を残していないのですが(汗)、今の所、これくらいでちょうどよいかなと。

以上は、綿の手紡ぎ糸の場合です。機械紡績の糸の場合は、もっとずっと少なくていいと思います。

工程その他

〇できあがった糊に椿油を落とす記述を時々見かけます。油で糸の滑りをよくするためかと勝手に解釈していましたが、粘度を増す効果があるとか。

私は精練をしない(綿の繊維の油を落とさない)ので、油添加の必要はないと考えていましたが、粘度を高めることができるのなら足してもいいかも。でも忘れちゃうんだよな。

追記 その後、糊付け時の油添加をやってみました。確かに粘度は上がり、何度か濯ぎ直すくらいでした(汗)。これはこれで記録して量の調整が必要になるので、使い続けるか微妙です…。

〇 フタをして放置するのは、浸透を待つ間に表面が乾いてしまわないように。ムラができてしまうので。

〇 絞って綛を開く過程を、今はベランダでしていますが、以前は洗濯機の脱水槽で絞って、ベランダで綛をほぐしていました。

上に吊るした竿にかけてほぐしていたから、腕も首も疲れて疲れて。

この体勢にして、綛上げ方法も変えたので、糊付けはだいぶ楽になりました。

以前通った機織教室では、室内で、機の一部を利用して絞って解していました。もちろん床が濡れないように古タオルを敷く等して。その準備が面倒なので私はベランダ(汗)。

糊が浸透しやすく・乾燥しやすい綛上げ

8月中旬に素手で生葉染めをしてしまい、染まっていた爪もほとんど目立たなくなったので、ようやく綿の簡易糸紡ぎキット向け動画を作り始め...

綛あげの時の巻き方については、以前書いた記事があるので、そちらをどうぞ。

綛上げ器の仕組みで糸振りしている動画を、この記事内でリンクをはってあります。

今回も検索してみたけど、手で糸を振ってる綛上げ動画が見つかりませんでした。

こうやって巻くのは、ただキレイだからというだけではなかったんだねー。

ひびろ糸(あみそ糸)

綛に数か所入れる、綛の糸をまとめる糸(紐?)をあみそ糸又はひびろ糸と言います。

糸の始めと終わりを結び付けて、判りやすくしたり、糸が乱れるのを防ぐ役目などがあるようです。

ひびろ糸は、綛を広げた時のことを考えて余裕のある長さ。

これまでは画像や動画の様に束を分ける箇所を8の字にしていましたが、8の字だとズレやすく、余ったひびろ糸が綛に絡んで扱いにくくなることがあるので、同動画でもお話した通り、変更予定。

ひびろ糸がずれて邪魔だと感じることはこれまでもあったけど、深く考えてはいなかった。

撮影して客観的に見ると、明らかにジャマしてる…実際糊付けをしてる時は、その作業に必死で、とにかく早く解して干さなきゃと思っているので、頭の片隅で煩わしく感じていても、作業中にどんどん追いやられて、忘れてしまってたんですね…。

で、今後やってみようという結びがこの画像。ちょっと絡めてるだけで、難しくはないかな。

以前、このひびろ糸の結び方を教えてもらった時は、ああこんな結び方もあるんだなと思っただけで、その結びの何がどういいのかという説明もなく、私自身も考えなかった。

だから楽な8の字をずっと続けてしまったけど、ようやく気づけました。

思い出すと、昔購入した綛の仕付け糸は8の字ではなくこんな感じだった気もする。

これで本番の地機布15の時はよりスムーズにできるかな?

追記・糊落としについてはこちらの記事をどうぞ!

先日、東京渋谷の田中直染料店で、経糸の糊を落とす、ネオプライマーゼという澱粉分解酵素を購入しました。 数年前から、耳にはしていたのですが、こ...

竹筬についての動画

竹筬(たけおさ)という織り道具の簡単な紹介動画を投稿しました。

後半は中古筬を組直し用に解体する様子。

前半で中古の竹筬を見ながらお話した竹筬の特徴をざっとまとめると、以下のようなお話になったかと思います。

竹筬(たけおさ)という織り道具の簡単な紹介と、中古筬を組み直し用に解体する様子(音声あり)
  • 手紡ぎ糸等部分的に太さの違う糸も、竹がしなることで行き来しやすい
  • 伸子など幅だし不使用時、両端の経糸が斜めになっても、竹がしなることで経糸が傷みにくい
  • 竹が傷つくことで経糸が傷みにくい
  • 経糸に筬の重みがかかる地機・腰機でも、竹が軽いので、経糸の負担が軽減
  • 破損しやすいので、修理・手入れが必要(数枚の羽の入れ替えなどは自分ですることも可能かと)
  • 保管の仕方が、劣化・歪みに影響する
  • 製作に技術がいる&手間がかかるため高価

以前、ある地機の体験教室に行ったことがあったけど、その体験用の機は金筬。経緯とも手紡ぎ糸でも無かったので、問題はなかったけど…たぶん高価で貴重な竹筬を大事にされてるのだろうと思いました。

数か月だけ通った織物教室では、高機で竹筬。普段年季の入った中古の竹筬しか見ていなかった私には、比較的新しめの竹筬がまた違った美しさで、感動。

使わせてもらえて嬉しい反面、筬通しではかなり緊張もしてました。

綿に関する動画も猫の額くらいニッチな分野かと思いますが、たくさんある織りの道具の一つ、竹筬について知りたいと思う人は、更に更にトカゲの額くらい狭い層かと思いつつ、動画を作りました。

竹筬に興味を持った人が、いろんな情報にたどりつけますように。

以下、動画説明欄にも載せたリンク。

日本竹筬技術保存研究会(会長解説動画へのリンクもあり) こちらこちら

竹筬の製作動画(たぶん研究会関係の方のチャンネル)

『竹筬 製作と修理の方法』

『竹筬 製作と修理の方法;改訂増補版』

貴重な筬の専門店

わたいとやブログのこれまでの竹筬記事

私わたいとやは、研究会その他団体とは無関係な、竹筬好きの一個人です。