緑一覧

緑綿のアルカリ浸水実験の結果から

「緑綿の色」動画の中の字幕の間違いを発見しました。下の画像が正解。大変失礼いたしました!(動画は後から修正ができなくてモヤモヤ)

動画のなかで使用した糸は4種類。

  1. 2019年産暗所保管の綿でカードをせずに紡いだ糸
  2. 2019年産暗所保管の綿でカードをかけて紡いだ糸
  3. 2020年産明所乾燥の綿でカードをせずに紡いだ糸
  4. 2020年産明所乾燥の綿でカードをかけて紡いだ糸

実験は3種類で比較対象がAです。

  1. 撚り止めのみ
  2. 酸→アルカリ
  3. アルカリ
  4. アルカリで煮る

まず、赤枠の中で比較してみると、大きな差はないように見えます。

2019年産暗所保管の撚り止めのみの糸と、赤枠内の他の糸では若干、濃くなったように見えますが、若干です。

数値などで表せればよいですが、残念ながらそうした機械などはありませんので、目視、しかも私個人の独断と偏見であることはご了承を(できたらご自身で実験してお確かめください)。

画像は全てクリックで拡大可能

2020年産・明所保管の綿はクリーム色に見えますが、アルカリ処理をすると、2019年産暗所保管の糸と同じような濃さの緑になりました。

このあたりは、大体これまでの経験どおりの結果。

私が今回一番注目したのは「アルカリで煮る」ことをした糸です。

左・アルカリ浸水カード済
中・アルカリ煮カード済
右・アルカリ煮未カード

実物の色はアルカリ煮の方が濃いけど、これもさほどの差ではありません。そのせいか画像では判りにくい(汗)

でも何となく区別はつくんですよ。タグを見なくても。色というより艶が少なくなって、そのために、光の反射が減り、トーンが違うような、ベタっとしたような色に見えるんですよね…。

濃く見えるのは、そのためかも?

ここまでが実験結果の糸の観察。以下は推測・憶測・当てずっぽうの話。

アルカリ浸水とアルカリで煮ることの違い

アルカリ浸水は以前もやっていましたが、今回初めて「煮る」実験をしました。これまでは緑の色を変える時、低温の水でアルカリ溶液を作って浸水させるだけでした。

アルカリで煮る=精練 →繊維についた油・ワックスを落とすということ

綿の繊維はもともと油分を含んでいるとか、ワックスでコーティングされているとか言われています。何もしない状態の綿の繊維は水を弾くことからも、それは確かです。

撚り止め(中性水で煮る)でも、多少の油は落ちますが、私の様に煮る時間が短ければ、油分はかなり残るようです(次に水に浸す時でも吸いにくいので)。そこから、

アルカリで煮たことで油分が減り→油による光沢が減り→色がハッキリした

色を覆っていたビニールやガラスみたいなもの(油)が無くなったような感じ?? だから透明感のある緑ではなく、ベタっとした緑に見えるのか??と思ったのですが…。

今回の動画を作るにあたって、いろいろ調べていたら、Sally Foxさんのホームページインスタグラムを見つけました。SallyFoxさんというのは、緑綿や茶綿などの色綿を、交配させたりすることで、長さや強さを機械紡績に耐えられるようにしてこられた方です。

その方のホームページにこんなページがありました。

color development information

「The green color is composed of waxes classified as suberins. They are laid between each of the 20-35 layers of cellulose within the cotton fiber.」

(DeepL翻訳) 緑色の部分はスベリンと呼ばれるワックスです。綿繊維の中の20~35層のセルロースの間に敷き詰められている。

つまり、綿の繊維の、セルロース層の間にあるワックスが、緑の色の元である、ということであってますかね(汗)。

ということは、アルカリ溶液で高温で煮ることで、セルロース層がはがれ、下層の緑の濃い層が現れた、とか?

ただ、この仮説だと、低温のアルカリ溶液で、あらたな緑の層が現れる理由は説明がつかない。セルロースは水に不溶らしいし。ということは、やはり色の元自体が変容するのか?

糸を浸水させた後のアルカリ溶液が色づいていることからも、何かしら溶け出ているものはありそうなのですが…。

なぜ緑色が濃くなるのかは判らないままだけど

今回の緑綿の実験に関連して判明していることを再度まとめると…

  • アルカリ水に浸すと緑が濃くなる
  • 酸性水に浸すとクリーム色になる
    • 色を変えたくなければ中性洗剤で洗濯する(経年変化によるクリーム色への変化は避けられない)
  • 酸性水に浸してクリーム色になったものを、アルカリ水に浸すと緑が濃くなる
    • 経年でクリーム色になったものも、アルカリ水で緑が濃くなる(限界はある)
  • アルカリ溶液で煮ると緑が濃くなる(茶綿も茶が濃くなったことがある→こちら)
  • アルカリ溶液で煮ると油コーティングが落ちる
  • アルカリ溶液で煮ると油による光沢が減る?油による防護がなくなる?(ここは推測)

10年経った緑綿のマフラーも参考まで…

動画でもご紹介した、収穫・製作から10年経った緑綿のマフラーですが、もうこの色で打ち止めな感じです。アルカリ浸水しても変わりません(煮たことはないけど…)。

10年間、それなりに着用や洗濯をしてきたので、色も肌触りも変わりました。市販のものと同じです。

緑綿独特の柔らかさは無くなってるし、とても未熟な織りで恥ずかしいけど(汗)。この変色した抹茶のような枯草のような色も好きで、今も畑に巻いていきます。

敷いているのは10年以上前に収穫・作成したマフラー
糸は実験に使った 上/アルカリ煮・下/撚り止めのみ


緑綿の色についての動画(追記あり)

最初は緑綿全般、栽培や紡ぎ方についての動画を作るつもりでした。

が、すごーく長く、大変になりそうだったので、とりあえず今回は、繊維の色についての動画になりました。

そしたらほとんど既に記事にしている内容のような…?ブログの動画化? まあ情報が特に変わったわけではない…(汗)

クリックでYouTubeに飛びます

緑綿の色 まとめ

綿の実自体の色の変化

  • 実のバリエーション
  • 一つの実のなかでの色調
  • 房のなかでの色調
  • タネの周囲の色調

これらについて、一部、以前書いた記事はこちら↓

緑綿を栽培して約10年。ウチの緑綿だけなのかどうか判りませんが、いろんな緑のバージョンの実ができます。その一部をご紹介。 ち...

経年による色の変化

  • 基本的に経年の変色自体は止められない(畳や竹と同じ)
  • 促進・停滞させることはできる
  • 数回に限り、色を戻す方法もある
「緑綿ばらえてぃ」の記事では、さまざまな実の色をご紹介しましたが、こちらは、その色の変化についての記事です。 日照か酸化か経...

アルカリ度による変化(動画でやった比較実験)

  • 撚り止めのみ
  • アルカリ浸水
  • 酸→アルカリ
  • アルカリで煮る

前述の記事にも書いてますが、あらたにこの実験についての考察も、また後日、別記事にする予定です。

後日追加した記事↓

「緑綿の色」動画の中の字幕の間違いを発見しました。下の画像が正解。大変失礼いたしました!(動画は後から修正ができなくてモヤモヤ) ...

【追記】動画内ではアルカリ剤として、炭酸ナトリウム(ソーダ灰、炭酸ソーダ、炭酸塩)を使用しています。重曹や他のアルカリ洗剤などでもアルカリ溶液はできますので、挑戦する場合は、少しずつ濃度を変えてお試しくださいm(_ _)m  酸性水はクエン酸。これもお酢などで代用可能です。

緑綿の色のウラオモテ

  • 染色不要=染色の楽しみがない=染色しなくて済んでいろいろ節約
  • 色が不安定=好きな色が保てない=違う色が楽しめる
  • 色が移り変わる=同上

私はこの色も、変色した色も、肌触りも好きで育てています。色つやもあって美しい色だと思っています。

もし同じようにこの緑綿が気に入られた方、興味のある方は、ぜひタネから育てて欲しい。色の移り変わりをご自身で見てみて欲しいです^^

緑綿のタネはこちらで販売中。種取済みの繊維も。

実綿はこちら。

余談

ちなみに、「よい点悪い点」と言いたくないなという気持ちで、「ウラオモテ」と書いてみました。

人工物や人に関することなら、メリットデメリットと書くことにさほど躊躇いはないのですが、自然のものにそういうのは何となく違和感があって。

どちらにしろ、それはヒト側の都合でしかない。それに、そのヒトもそれぞれ好みがありますから、何をよいと思うか悪いと思うかはそれぞれで。

緑綿動画の副産物的撚止め動画もどうぞ!

だから色が変わることについても「劣化」ではなく、「変化」。違う色になるだけ。本質的には、色に優劣はないという考えです。

優劣や善悪、正誤や利害という評価につながる言葉には、普段からできるだけ注意しています。個人的には、ヒトは結局好きか嫌いかでしか判断できないのではないかと思っています。何が正しいのかはその時代のヒトの基準で判断するだけのことかと。

エコとかオーガニックとか評価や価値に繋がる抽象的な言葉も、ホントはできるだけ使いたくない。まあ、販売促進で使うことはありますよ(汗)。でもかなり控えめにして、具体的な事実・考えを述べてる、つもり。


緑綿の黒いつぶつぶ

先日書いた、「和綿のつぶつぶ」という記事に関連して、
今度は緑綿のつぶつぶの話。

といってもこれは違うもの?


和綿のつぶつぶはタネのなりそこないのようでしたが、緑綿に混ざってる黒いつぶつぶ、小さな長細いモノは、タネの一部・破片ではないかと思います。

タネの尖った先に黒いとげのようなものがついていて、ちょっといじるとポロっと折れる、というか、落ちるのです。

この黒いモノは綿繰りをした後に見つかることが多く、実綿の状態の時にはあまり見た覚えがありません。

一方で、和綿のつぶつぶは実綿の状態のときから混ざっているのを見かけます。

和綿のタネにも、2枚目の画像のように、やはり先っちょに黒っぽい部分があります。

でも軽く触ってぽろっと外れる気配はありません。少し力を入れて折れるような感じ。

タネのなりそこないにもついている

1枚目の画像の下側にうつっているのが緑綿のタネのなりそこないですが、これにも黒いとげがついています。画像はクリックで拡大するので、大きくして見てみてくださいね。

緑綿の黒いとげ風のものには、和綿のつぶつぶにあったような産毛もついてないし、やはり違うモノといえそうです。

ちなみに和綿以外の茶綿・赤茶棉でも、この黒いとげみたいな破片は見つかります。また、これが折れてしまっても発芽に影響はありません。


緑綿の赤木緑木

必ずしも同じものが同じようにできるわけではないのが植物。

緑綿の畝に、赤い花でない花が咲いているのに気づいたのは7、8年前。

茶綿でも混ざってしまったのかなと思ったが、開いた実は緑。茶でもカーキでもなかった。

(左)緑木白花の緑 (右)赤木赤花の緑

それからは印をつけ、分けて収穫して、畝を分けて栽培を続けてきた。
花の色以外にも違いがある。

赤花の方は繊維のコシは弱く、艶がある。ただし色も艶もコシも、個体差があって様々な実が収穫できる。こちらの記事の様々なトーンの緑の実は全て赤花。

(左)緑木白花の緑 (右)赤木赤花の緑

クリーム色の花の方は赤い花になる実より繊維の特性のばらつきが少なめで、ほぼ同様。

画像は全て左が緑木・白花、右が赤木・赤花。

緑木の双葉や幹の写った画像がみつからなくて残念。茶綿の双葉と同様で、その後の木の姿もよく似ている。

(左)緑木白花の緑 (右)赤木赤花の緑

ちなみに「赤花」「白花」とか、紫蘇綿の記事でも使った「赤木」「緑木」は、私が勝手に区別のために使っている(作った?)言葉。鴨川農園の『わたわたコットン』の中でも見た覚えがあるけど、一般的な言葉なのかどうかは知りません(汗)。

木の幹、枝、花のガクなどの赤味具合もバラつきがあるが、花は明らかに違う。でも開花後の花はやはり赤味を帯びてしぼむので、しぼんだ花だけを見ていると気づきにくいかも。

(左)緑木白花の緑 (右)赤木赤花の緑

 

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実も赤と緑。成長速度は一緒なようで、ただほんの少しだけ、緑木のほうが早い気がする。気がする、程度としか言えないけど、今年は開花は赤花の方が早かったのに実が開いたのは緑木の方が早かった。

木の成長もそう感じることが何度かあった。でも和綿との違い程はっきりはしていないし、たまたま環境の差、個体差かもしれない。

分けて栽培してきたが、数本、播いたはずのものと違う木になることもあった。赤木の畝に赤木のタネを播いたはずが、緑木が育って白い花が咲いたり、逆のことも。そういうのは印をつけてタネ用から除外してきて、今は赤木の畝から緑木、白い花が現れることはない。

今年、緑木の畝からは2本(約60本中)、赤い花が咲く木があった。最初の頃は1/10くらい混ざっていた。この特性は固定されてきているといえるのかな。とりあえず、緑木・白花は環境要因ではなく、遺伝的なもの、突然変異か何かで出現してきたのだとはいえそうだ。

販売用はすべて赤木・赤花の方を使っています。緑木から収穫された実をご希望の方は購入時にお伝えください。上記ご理解の上でm(_ _)m


緑綿の色の変化 5年経過後の処理

スピパ出店初期から展示していた、緑綿の色を変化させる実験をした糸。

画像左が、2012年収穫の綿で2013年に紡いだ糸で、同年にアルカリ、酸、ベランダ放置などの処理をしたのでした。

5年経った今でもこの糸たちをアルカリ処理すれば緑の色を濃く出来るのか、試したのが右の画像。濃くなりましたね!

この糸は元々、暗目の緑綿に少し赤茶・白を混ぜて紡いだ糸なので、濃い色の糸でしたが、多分、紡いだときより濃くなっていると思います。比較のため縦に置いた綛が普通の緑綿。

残念なことに、比較保存のためにアルカリ処理前に綛を分けておくのを忘れたので(汗)、元の糸の色は画像でしかみていただけないのですが、変化後の現物の糸をスピパで展示しますので、よかったらご覧ください。

そしてまた数年後にこの糸の色の変化をご報告できれば。。